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いいなぁおとうさん絵本の楽しみ

©すもも
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 先日「父の日」がありましたが、皆さんの中で「お父さん」はどんな存在でしょう。優しい? ちょっと怖い?…。子どもたちが親しむ絵本の中でも、さまざまなお父さん像が見られます。上田市内の小学校で児童に本を紹介する事業「本はともだち」で講師を務める山浦美幸さんに紹介してもらいました。


おやすみなさい フランシス

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ラッセル・ホーバン/文

ガース・ウイリアムズ/絵

まつおか きょうこ/訳 福音館書店


 フランシスはアナグマの女の子。寝る時間になったら寝なければならないことはわかっていても寝たくないフランシスと、おとうさんおかあさんとのやりとりが描かれます。フランシスの姿は誰もが経験した子ども時代の気持ちを思い起こさせます。そして子どもにしたら「叱られた」という印象しかない場面に、おとうさんのユーモアと愛情を感じるのは、年を重ねたからこその楽しみかもしれません。




もりのなか

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マリー・ホール・エッツ/文・絵

まさき るりこ/訳

福音館書店


「ぼくは、かみの ぼうしを かぶり、あたらしい らっぱを もって、」(句読点 スペースともに絵本の表記)というフレーズで始まるこの物語は、それが空想なのか現実なのかについて言及しません。けれど、その境界線が曖昧な子ども時代を鮮やかに描いています。何より最後に出てくるおとうさんが男の子にかける言葉がすてきです。上田情報ライブラリーにもある原書で読むと絵と文章がより一致して楽しめます。


おとうさんの ちず

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ユリ・シュルヴィッツ/作

さくま ゆみこ/訳

あすなろ書房


 戦争のため4歳で故郷を追われた作者の自伝的絵本です。子どもの目線で描かれる難民生活は、実体験に根ざしたリアルさがあります。食べるものにも事欠く過酷な生活の中でおとうさんが買ってきた地図。この地図と過ごす時間が伸びやかに語られます。おとなは作者の意図やメッセージを探しがちですが、飾らない等身大の主人公の姿が全てを物語っています。主人公の気持ちに沿っていくことで魅力が増す絵本です。


あたまにつまった石ころが

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キャロル・オーティス・ハースト/文

ジェイムズ・スティーブンソン/絵

千葉茂樹/訳 光村教育図書


 作者のお父さんが主人公の実話です。始まりは主人公の子ども時代の石集め。そして石への興味は、働くようになり家庭を持つようになっても薄れず続きます。大恐慌で職を失い、苦しい生活になっても石への好奇心を失わず、生きる励みにしていた彼に、ある日転機が―。単純に教訓を引き出してしまわずに、「こんなこともあるんだなあ」と心にしまうことで、人間捨てたもんじゃないと思える土台ができる気がします。

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