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異業種への挑戦で地域貢献も!自動車部品メーカーがコーヒー豆栽培⁉

部長の井出隆宏さん(写真左) 主査の中曽根英明さん(写真右)
部長の井出隆宏さん(写真左) 主査の中曽根英明さん(写真右)

 めまぐるしく変化する世界は、地域の産業にも影響を及ぼしています。企業の中には「本業」の枠を超え、新たなビジネスチャンスを模索する動きも目立ち始めています。そんな会社の一つが、上田市の「アート金属工業株式会社」。自動車のピストンを製造する会社でありながら、会社の敷地内でコーヒー栽培にも取り組んでいます。

「なぜこの会社が、この上田でコーヒーを?」。そんな疑問を、同社経営企画部の井出隆宏部長にぶつけてみました。


国内シェア№1の自動車ピストンメーカー

 同社の「本業」は、自動車などのエンジンに欠かせない部品の「ピストン」の製造です。トヨタ自動車が主要の顧客で、製品の国内シェアは第1位。その技術は、世界の市場でも高く評価されています。

 とはいえ、地球温暖化抑止の流れの中で電気自動車(BEV=バッテリー式電気自動車)化が進み、かつてないほどエンジン部品の需要が減ると予測されます。「会社の存続は、地域の産業や雇用を守るためにも重要。そのために、新規事業を模索する必要がありました」と井出さん。BEV部品や自動車外部品の製造、ほかには地域社会貢献の事業も―ー。

 社内でアイデアを募り、検討した結果、行き着いた新たな事業のひとつが地域社会への貢献度合いが強い「コーヒー栽培」です。


製造業の高度な技術を生かした農業

 それにしても、なぜ「コーヒー」なのか。その理由は、地球温暖化による産地の変化と、同社の製造技術が栽培施設の管理に生かせることでした。

 世界の主要なコーヒー豆産地である中南米やアフリカでは、温暖化の影響で不作が続き、コーヒー豆の価格も高騰しています。一方で、熱帯性の植物であるコーヒー豆でも気温や湿度が管理された室内なら日本でも栽培が可能。同社が培ってきた、製品の生産を管理するノウハウを、施設の集中管理システムに生かすことができます。


ICT+環境技術で栽培

 2022年、同社は敷地内に250平方㍍の農業ハウスを設置し、コーヒー栽培を始めました。ハウス内の温度の調節には地中熱も利用してCO2を削減。

 個々の木の生育状況や温度、湿度の状況の把握、さらには熱帯地方のような「雨季」と「乾季」の環境を再現する空気調節などは情報通信技術(ICT)を駆使して行い、少ない人数で良質の豆を多く作ろうとしています。


安定した収穫が見込めるように


コーヒーの花
コーヒーの花

 コーヒー栽培は3年目を迎えて、樹高は3㍍近くに。5月ころ、ジャスミンのように香る白い花が咲き、やがて青色の実に。その実が赤黒く色づく翌年1月ころに収穫するサイクルで、今期は80㌔焙煎(ばいせん)すると約800㌘の収穫を目指しています。

 一番大変なのは、病害虫の被害を防ぐこと。カイガラムシ、アブラムシなどを目視で確認し、ピンセットや歯ブラシで一つ一つ取り除いていきます。



ブランド化で地域社会に貢献を

 同社で採れたコーヒーを、市内のコーヒー専門業者に味わってもらったところ「甘みがあっておいしいけれど、酸味とコクがもう少しほしい」との評価が。同社はこれを〝伸びしろ〟と受け止め、品質の向上に努める考えです。目指すのは、上田産コーヒーをブランド化して、地域の活力を上げること。一緒に栽培に取り組んでくれる人にはノウハウなどを提供したいと、賛同者を募っています。

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